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パリ18区 − 一度死んだ男が甦る。80年代フレンチ・ノワール美学の金字塔 映画『チャオ・パンタン』7月4日(土) ユーロスペース、シネマリスほか全国順次公開

映画『チャオ・パンタン』公式サイト
7月4日(土) ユーロスペース、シネマリスほか全国順次公開
80年代フレンチ・ノワール美学の金字塔80年代フレンチ・ノワール美学の金字塔
パリ18区。しがないアル中の中年男ランベールは、夜のガソリンスタンドで働いている。その姿は抜け殻のようで、酒をあおりながら余る人生をただ終わらせようとしているかに見える。ある晩、そんな彼のもとに、ユダヤとアラブの血を引く青年ベンスサンが逃げ込んでくる。親と子ほど歳の差のある二人だが、孤独な魂が触れ合ったのか、それからベンスサンはたびたびランベールに会いにくるようになる。ランベールもまた、何かと彼の世話を焼き始めるが、ある日そんな日々も突然の終わりを告げる。麻薬の売人をやっていたベンスサンが、オートバイに乗った二人組の男たちに殺されてしまったのだ。ランベールは、ベンスサンを死に至らしめた者たちへの復讐の決意を固め、夜の街へと歩を踏み出していく。そしてすでに死んでいるかのような人生を送っていたランベールの過去も次第に明らかになっていく。
80年代フレンチ・ノワール美学の金字塔
艶やかな「黒」に彩られた雨に濡れたパリの夜
『チャオ・パンタン』はヌーヴェル・ヴァーグだけにとどまらず「チェコ・ニューウェイヴ」とも横断的に関わった、『老人と子供』や『愛と宿命の泉』などで知られるクロード・ベリが監督した1983年の作品。フランスでは当時、400万人近くの観客を集める大ヒットとなり、セザール賞でも5部門に輝き高く評価された。
1983年と言えば、フランソワ・ミッテラン大統領の政権下で移民政策が緩和にされ、特に北アフリカ系アラブ人の流入により彼らの存在が少しずつ可視化されるようになった時代でもあった。そのような時代背景のもと『チャオ・パンタン』は、それまでの〈フレンチ・ノワール〉の美学を踏襲しつつも、後の〈郊外バンリュー映画〉を予見させるような、当時のフランス社会における、都市の周縁マージナルに追いやられた者たちの孤独や哀しみを描き出した作品となった。
主役のランベールを演じるのは、フランスの国民的人気コメディアンだったコリューシュ。セザール賞の最優秀主演男優賞に輝く畢生の名演となった。一方、ベンスサン役には、ジャック・ドワイヨンの『ピストルと少年』の刑事役などで知られるリシャール・アンコニナ。危うさと純粋さを兼ね備えた青年役を見事に演じ、セザール賞の最優秀助演男優賞と有望新人賞のW受賞となった。また、バウアー刑事役は『愛しきは、女/ラ・バランス 』のフィリップ・レオタールが、パンク・クラブに出入りするローラ役には当時新鋭のアニエス・ソラルが務めた。
原作は、『太陽が知っている』で知られるアラン・パージュ。脚本はパージュとベリが共同執筆。撮影は、マルグリット・デュラスの映画などで知られる名手ブリュノ・ニュイッテン。この映画の夜の撮影はあまりにも素晴らしく、セザール賞の最優秀撮影賞を受賞した。そして美術は、『天井桟敷の人々』など戦前から活躍しているベテランのアレクサンドル・トローネルが手がけ、この作品に深い詩情を与えている。

コメント
敬称略 / 順不同

雨にぬれた都市のブルーの夜。そこに不穏な音楽が重なる。
ただならぬ気配を漂わせた冒頭場面から、一気に映画に連れ去られる。
フランス版『タクシー・ドライバー』と呼ばれるが、クールで不条理なあの傑作の闇とは個性が違う。寡黙な主人公の感情もぬれていて、情の深さがあり、悲哀が余韻となる。影を生かす撮影も圧巻。80年代、初期ユーロスペースで上映された“死角”的な作品で、40年ぶりに同劇場へのカムバックも感慨深い。
—— 大森さわこ(映画評論家/ジャーナリスト)
フレンチノワールと言ったら、トレンチコートを着たおっさんたちが、
組織のためとかなんとか言いながら、裏切ったり暗殺したりするイメージ。
でも全然違かった。
コート着ないしクロワッサンも食べない。
タトゥーにタンクトップの中年給油係が、ひたすら火に油を注ぎまくる。
ジョージ・C・スコットのように激怒し、ブロンソンのように復讐する。
『ディーバ』よりもスタイリッシュで、『レオン』よりも切ない。
彼の最後の決断に、ここ最近で一番、胸が熱くなった。
—— 佐向大(映画監督/脚本家)
いたってふつうの日常が不思議とグラマラスに見える、これこそ映画の魔法!
美術監督は『天井桟敷の人々』『愛人ジュリエット』のアレクサンドル・トローネルなのだから納得だ。勝負にも見捨てられた、疲れた大人たちが夢をみるために、こういう映画はいつも映画館で流れているべき!
—— 和泉萌香(映画文筆)
80年代のフィルム・ノワールの金字塔に大人の濃厚なブルース・ロックを聴かせて豊醇な味わいを加えるシンガーソングライター、シャルレリー・クチュールによるサウンドトラック。彼の作る妖しい夜の甘い世界が、ハードボイルドで危険をまとう男の痛みを癒していく。
—— 馬場敏裕(サウンドトラック・ナビゲーター)

THEATERS

公開日 地 域 劇場名
関 東
7月4日 渋谷区 ユーロスペース
7月4日 千代田区 シネマリス
甲信越静
近日公開 長野市 長野ロキシー
8月22日 松本市 松本CINEMAセレクト
中部・北陸
8月15日 名古屋市 ナゴヤキネマ・ノイ
近日公開 金沢市 シネモンド
関 西
7月18日 大阪市 第七藝術劇場
7月24日 京都市 アップリンク京都
8月22日 神戸市 cinema KOBE
中国・四国
近日公開 広島市 横川シネマ
九州・沖縄
近日公開 福岡市 KBCシネマ
近日公開 那覇市 桜坂劇場
監督・脚本 クロード・ベリ 原作 アラン・パージュ 撮影 ブリュノ・ニュイッテン 編集 エルヴェ・ド・リューズ 美術 アレクサンドル・トローネ 音楽 シャルレリー・クチュール 製作 ピエール・グルンステイン
出演:コリューシュ リシャール・アンコニナ アニエス・ソラル フィリップ・レオタール
1983年フランスカラーヨーロピアン・ヴィスタ92分原題:TCHAO PANTIN
キングレコード提供 コピアポア・フィルム配給
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